菊池さん~ありのままの居心地の良さが幸せ~

更新日:2018年03月23日

南伊勢町の山あいに佇む静かな集落にて、小さなデザイン制作室を営む菊池史香さん。
自宅と仕事場を兼ねた古民家のすぐ横には、清らかな川がさらさらと音を立てて流れています。

出身は高知県・四万十市。
大学では東京の美術大学へと進学しましたが、学生時代に出会った田舎の人々の魅力に惹きつけられ、以来都会からは距離を置いた生活を続けてきたそうです。

そんな菊池さんが南伊勢町に移住したのは2016年5月のこと。
こちらに来てまもなく2年を迎える彼女に、この町での「暮らし心地」を聞いてみました。

インタビューを受ける菊池さんの写真。
カニのイラストが描かれた絵が飾られている写真。

【お名前】菊池 史香さん
【家族構成】ネコ(フジコ♂)
【移住年】2016年5月
【出身地】高知県
【移住前の居住地】高知県馬路村→三重県志摩市→南伊勢町
【仕事経歴】農協広報担当→フリーデザイナー(現在)

これまでの経歴を教えてください。

生まれは清流・四万十川で有名な高知県・四万十市です。
大学では東京の美術大学に進学し、そこで映画制作などを勉強しました。

大学生の時に、映画のロケハンも兼ねて日本一周をしたことがあったんでが、この旅を通じて感じたのは、日本のほとんどは地方だということ。その延長の思考で、映画の制作も殆どの作品が地方を舞台に行ないました。田舎の日常や人々の生命力がすごいと思ったんですよね。だから、大学卒業後は東京じゃない地方で暮らしたいと思っていました。で、やっぱり候補地としては地元高知が真っ先にあがりますよね。当然。「ごっくん馬路村」というゆず飲料があるんですが、高知の人なら知らない人はいないくらいの県民ドリンクで私も子どもの頃から大好きでした。その味もそうなんですが、馬路村の情報発信が抜群にうまくて。馬路村は当時1200人くらいの山奥の小さな村なんですが、とにかくその田舎っぷりを村人全体で堂々と誇っているイメージがあったんです。DMにもCMにもポスターにも商品よりも村人が前に出てきて、東京に住んでて、本当にかっこよくみえたんですよね。大学卒業の年、その馬路村農協がたまたま職員を募集していて、運よく、馬路村農協に就職することができました。

村の農協では、広報担当として農協新聞の編集や商品パンフレットの制作などに携わりました。どこかでイベントがあればすぐ取材に駆け付け、タケノコ掘りが始まったと聞けば急いで写真を撮りに行ったりして…(笑)

地元の人たちとも仲が良く、生活自体はすごく楽しかったのですが、ある時期を境に、「若いうちにもっといろんな世界を見てみたい」という気持ちが芽生えてきました。

インタビューを受ける菊池さんと、家族のフジコ(オスのネコ)が写った写真。

2年間休職して、スリランカへ青年海外協力隊に行ったりもしましたね。

2014年に友人から誘いがあったことをきっかけに、隣の志摩市に移住することに決めました。

伊勢志摩エリアを移住先に選んだ理由は?

部屋の中から外の景色を写した写真。窓の外には田畑や山などが見え、のどかな風景が広がっている。

たまたまのご縁です。

すべて。

でも住んでみて、バランスのいい土地だと感じます。

人も景色も環境もおだやかで。

実は大学生の時に、映像制作のロケハンを兼ねた1人旅で全国を回ったことがありました。その時はもう本当にいろいろな出来事があって能登半島で風邪を引いたときは、イカ漁師のおじいさんの家で3日ぐらいコタツに入って過ごしたりもしました(笑)

この旅を通して感じたのは、田舎で過ごす日常がとっても心地いいものだということ。
田舎の「ハレ」の部分だけではなく「ケ」の部分を経験できたことが、今の暮らしにも繋がっている気がします。

南伊勢町に移住されたきっかけは?

南伊勢町の自宅周辺の様子を写した写真。
自宅を玄関から写した写真。
台所の様子を写した写真。

この家に住んでいた知り合いがちょうど引っ越すことになり、一度連れてきてもらったんですが、その時に「ここしかない!」と一目ぼれして即決。決め手になったのは、家が建っている立地条件ですね。

敷地を迂回するように川が流れていて、三方を流れに囲まれた離れ小島みたいな家。昔から川のそばで生活してみたいと思っていたので、まさに理想の住環境でした。

やっぱり四万十出身だから、「川好き」がDNAに刻まれているのかもしれませんね(笑)もちろん築70~80年ということで、我慢しなきゃならない所もあります。

どうしても雨漏りはしますし、隙間風で冬の灯油の減りもすごく早いですから。でも生活をするうえでは、仕方がないこと。今はいろんなハプニングを楽しみながら生活することができています。

あえて不便な点を挙げるとすれば?

壁に掛けられたポストの上に乗っている「きくデザイン制作室」の看板を写した写真。

現在は「きくデザイン制作室」の看板を掲げ、フリーで印刷物やプロダクトデザインの仕事をしています。

不便な点は、やはり紙などのデザイン素材を探せるお店がないことですね。

月に1回は京都や大阪まで足を伸ばして、お店巡りに行きます。

でも都会にお出かけすることは、生活のいいアクセントにもなるんですよ。普段は田舎で落ち着いた毎日を過ごし、たまにモノであふれた都会に行く。うまくバランスのとれた生活ができていると感じています。

なにより南伊勢町は、京都・大阪・名古屋のどの都市までも2時間ほどで行けちゃいますから。考え方次第ですが、こんな便利な土地って他になかなかありませんよね。

周囲の方々のサポートはありましたか?

菊池さんの仕事場の写真。マックのキーボードが写っている。

何より近所の方々がとっても暖かく迎えてくれたのがうれしかったですね。

例えばあるおじいさんは、私が移住してきたことを耳にして、3日目ぐらいに周辺の地図をわざわざ手書きして、持ってきてくれました。

「ここには○○さんが住んでいて、ここは○○さんの家だよ」って、詳しい解説付きで…(笑)たっぷり愛情のこもったその地図は、今も大切に保管しています。最近では周辺の方々と「電子レンジ貸して」とか「お醤油少しわけて」と気軽に言い合っています。

仕事面でもありがたいことに色んなご依頼を頂く機会に恵まれて忙しくさせてもらっています。この前は、地元の高校生が運送会社のトラックに南伊勢をPRするためのデザインをするということで、高校に行ってデザイン指導のお手伝いもさせてもらいましたね。今後も私にできる範囲で、受け入れていただいた恩返しをしていきたいと思います。

移住して2年。改めて思う南伊勢のいいところは?

自宅前で菊池さんと赤いスクーターが写っている写真。

もちろん近所づきあいなどは都会よりも濃密ですが、信頼関係さえできてしまえば、あとはストレスゼロで生活できることですね。街自体に決して派手さはないんですけど、シニアの方を含めて皆さんが本当に生き生きされているのも魅力的だと思います。

大学生のころに感じたような、ありのままの田舎の居心地の良さを毎日の生活の中でたっぷりと享受できているわけですから、今は本当に幸せです。この先ものんびりと暮らしていければと思います。

玄関先に座っている菊池さんの家族フジコ(オスのネコ)を写した写真。
自宅でマックに向かい、仕事をする菊池さんの様子を写した写真。
部屋の中を写した写真。壁には箒、ちり取り、ハタキが等がかけられている。