谷川原さん ~「海の匂い」も「山の匂い」も感じる暮らし~

更新日:2018年03月23日

三重県志摩市にて生まれ育ち、数年前に農家になることを志した谷川原健さん。栃木県での2年間の農業研修を終え、その後の定住先に決めたのが南伊勢町でした。

町の「空き家バンク制度」を使って、のどかな里山風景が広がる切原地区に古民家を見つけ、現在は周辺のみかん農家さん、小麦農家さんのお手伝いを通して農作物の栽培技術を学ぶとともに、今年からは自ら農地を借り受け、水田の耕作にもチャレンジされているそうです。

移住先として南伊勢町を選んだ理由や現在の暮らしぶりを、谷川原さんにインタビューしてみました。

みかん畑で作業をする谷川原さんの様子を写した写真。
谷川原さんの自宅周辺を写した写真。

【お名前】谷川原 健さん
【年齢】37歳
【家族構成】妻、子ども3人(9歳、6歳、4歳)
【移住年】2017年2月
【出身地】大阪府(育ちは三重県志摩市)
【移住前の居住地】栃木県鹿沼市→南伊勢町
【仕事経歴】農業見習い→農家(現在)

これまでの経歴を教えてください。

父親の実家があった伊勢志摩で育ち、学校を卒業してからは、バス運転手の見習いからネイチャーガイドまで、本当にさまざまな仕事を経験しました(笑)

約3年前に農家を目指すことを決意。2年間の農業研修のため、妻と3人の子どもを連れて栃木県へ移り住みました。南伊勢町にやってきたのは、その農業研修を終えてからです。

みかん畑で収穫作業をする谷川原さんの様子を写した写真。

今は町の「若者チャレンジ応援事業」という制度を活用して、みかんや小麦などの農家さんを手伝いながら、農業についての知識と経験を深めているところです。

また今年の2月には、お世話になっている方から6反の水田を無償で借りることができました。

今後はこの田んぼでの作業にも力を入れていく予定です。

南伊勢町に移住を決めたきっかけは?

快くインタビューに答えて下さる谷川原さんの様子を写した写真。

農地を探すにあたって、土地勘のある伊勢志摩に戻りたいという考えはありましたが、具体的にどの自治体に移住するかまでは、直前まで考えていませんでした。

検討の際に決め手となったのは、南伊勢町が実施している「空き家バンク制度」と「空き家バンクリフォーム補助金制度」。

新規就農ということで最初は資金が少なく、お金の不安は常にありましたからね。

空き家バンク制度を通して、条件に合った古民家を見つけることができ、生活のための改修費用のほぼすべてを補助金で賄わせて頂けたことは大きかったと思います。

特にこの家は増改築が繰り返されていたようで、例えば居間から風呂への導線が塞がれていたりして、当初はお風呂に入るために、裸で一回外に出ないとダメな状況でした(笑)

大幅なリフォーム工事が必要だったわけですが、ほとんど資金の持ち出しなしで完了することができました。その際には、同時に妻の意向を取り入れたキッチン回りの改装も行うことができ、生活は本当に快適になりました。

リフォーム前の風呂の様子を写した写真。浴槽が狭い。

リフォーム前の風呂

リフォーム後のお風呂を打つつぃた写真。浴槽が新しく、広くなっている。

リフォーム後の風呂

リフォーム前の床を写した写真。

リフォーム前の床

リフォーム後の床を写した写真。

リフォーム後の床

リフォーム前の窓の様子。ガラスに汚れやくもりがあり全体的に暗い印象を受ける。

リフォーム前の窓

リフォーム後の窓の様子を写した写真。新しいガラスが窓に入り、明るい光が室内に差し込んでいる。

リフォーム後の窓

リフォーム前の天井の様子を写した写真。一部剥がれていたりしており、寒々しい雰囲気。

リフォーム前の天井

リフォーム後の天井の様子を写した写真。古い木を使って温もりが感じられる雰囲気に仕上がっている。

リフォーム後の天井

リフォーム後の台所の様子。谷川原さんのお子さんが椅子に座って本を読んでいる。
部屋の中の様子。冷蔵庫の扉にはお子さんが描いたらし絵が飾ってある。
リフォーム後の脱衣所の様子。

実際に居住して気付いた南伊勢のいいところは?

毎日を過ごす中で、「海の匂い」も「山の匂い」も感じることができる点です。
海と山の両方がここまで近い町は、他にあまりないんじゃないでしょうか。自然環境が極めていいということで、子育てをする親の立場としても非常に心強く感じます。

また柑橘類をはじめとしたフルーツがとっても豊富で、年間を通してさまざまな果樹が手に入るのもうれしいですね。みかん、デコポン、甘夏など、子どもが好きなフルーツも多く、家族全員が満足しています。

もちろん都会に比べるとお店の数は多くありませんが、街の中心にはスーパーも飲食店も揃っています。「何もない」わけではなく、すべてがコンパクトにまとまっているというイメージですね。車があれば、特に不便を感じることはありません。

谷川原さんの軽トラックの荷台を覗いている子供たちの写真。
収穫されたみかんが写っている写真。

生活をするうえで役立っていることは?

広場で遊んでいる谷川原さんと子供たちの様子を写した写真。

子どもが3人もいることもあり、地域の方々には最初からとても暖かく迎えてもらえました。

みんなであいさつ回りをした時も「賑やかでいいねぇ」って言ってもらえて。

特に切原地区は子ども会活動が盛んで、町内には子ども会の25mプールもありますし、冬はいちご狩り、夏は肝試しなどイベントも数多く開催されます。特に今は農作業で忙しく、休日に遠出することがあまりできませんので、子ども会活動が活発なことは、親としても非常に助かっています。

あとはやはり、頂きものが本当に多いですよね(笑)この前も20kgぐらいの猪肉をもらって、僕が悪戦苦闘して捌いたんですが。肉が新鮮だっただけに、本当においしかったですよ。

もちろんカキや魚などの海の幸も、近所の方などからよく頂きます。栃木時代ももらいものはありましたが、回数は圧倒的に増えたと思います。

地域の方々との結びつきは?

みかん畑で働く谷川原さんを写した写真。

地区内の連帯感は非常に強いですね。

毎年7月に切原地区で「浅間祭」というお祭りが開催されるのですが、年配の方々と接点を持てる絶好の機会ということで、声をかけていただき参加しました。

当日は白装束を着て川で身を清め、裸足で浅間山の山頂へと続く石段を上りました。こうしたお祭りに一度でも参加すると、近所の方々との距離が一気に縮まった感じがしますね。

8月には地区の方々のためのお札を頂きに、富士山登山にも挑戦しました。ちょうど台風の日にぶつかって、頂上までの道のりはとても大変でしたが、無事に「富士山頂浅間大社」と書かれたお札を持ち帰ることができました。

こうした地区の行事には、次回以降も積極的に参加したいと思います。

これから先の目標は?

谷川原さん、奥様、お子さん3人を写した写真。

しばらくは目の前の仕事に積極的に挑戦していく日々が続くと思います。借りた田んぼも猪に石垣を壊されてしまって、今は修復に追われているところですし(笑)のんびりと暮らしつつも、すべきことは山積みですね。今の目標は、まず米の生産を軌道に乗せること。

将来的にはもち米や小豆なども育てて、和菓子などの加工品販売を行うところまで、事業を拡げていければいいなと考えています。

ここ切原地区でも高齢化が進んでいて、空いている農地がまだまだたくさんあります。いつかそんな農地を借り受け、そこを使って地区に利益が出るような事業に繋げていきたい。

これまで地区の方々にとっても良くしてもらっているので、将来は何らかの形で恩返しができればと思います