令和7年度 町長施政方針
施政方針
はじめに
南伊勢町は人口減少や少子高齢化、防災対策、地域経済の活性化など、多くの課題に直面しています。
こうした中で、町民の皆様が安心して暮らし、未来へとつながるまちづくりを進めるためには、今必要なことを確実に実行するとともに、将来に向けた基盤を整えることが不可欠です。
令和7年度も、この視点を大切にしながら、「町民の声をカタチにする」、「町民の命と暮らしを守る」という基本理念のもと、まちづくりを進めてまいります。
本日は、総合計画の基本構想に基づき、令和7年度の施政方針をご説明いたします。
「働きやすく稼げる活力ある産業・経済」
私は「一次産業の再生なくして町の再生はない」、そしてそのカギは「後継者問題」だと考え、町独自の事業として後継者育成・担い手確保事業を開始しました。この取り組みは介護や福祉の分野にも広がり、人口減少と高齢化という本町の大きな課題を解決する一助となっています。
産業振興にはすぐに解決できる特効薬はありません。しかし、一歩を踏み出せば新たな景色が見えてきます。町民の皆さんの声に真摯に耳を傾け、それを形にしていくことで、町のあちこちに若い力が育ち、地域全体に活気が生まれています。
これまで多くの方々が築いてきた産業に若い力が加わり、本町の「稼ぐ力」にさらなる磨きをかける。そうした未来を目指し、引き続き取り組んでまいります。
観光は本町にとって重要な成長分野です。インバウンド需要が注目される中、本町の観光のあり方として「量ではなく質」を重視し、「ここでしか体験できない価値」を提供することが大切だと考えています。
単なる観光客ではなく、「南伊勢町のファン」になってもらうことを目標に、本町の豊かな自然、そこで営まれる暮らしと産業、それらを観光資源として活かし、国内外の旅行者と継続的に関わる観光施策を進めてまいります。
地域の賑わいを生み出し、活気を象徴する存在が地域の店舗であります。その店舗が、消費者のライフスタイルの多様化や後継者不足により厳しい状況に直面しています。一方で、町内では若者が新たな挑戦をし、地域を支える姿が見え始めています。この動きを力強く支援するため、開業支援や事業承継のサポートを強化し将来を見据えた振興策を進めてまいります。
町民の命と生活を守る「安全安心のまち」
防災に「十分」とか、「絶対大丈夫」ということはありません。しかし、被害を最小限に抑えるためには、ゴールのない防災と向き合い、不断の努力を続けることが求められます。そのためには防災意識を高め、防災行動を促すことが不可欠です。
本町のように、南海トラフ巨大地震・津波のリスクを抱え、住民の防災意識が高い町であっても、意識と行動の間にはギャップがあるのではないかと感じています。防災対策の実効性を高めるためには、このギャップを埋め、関心を具体的な行動につなげることが重要であると考えます。
本町では、避難路や一次避難所の見直し・整備、耐震補強など防災対策を強化してきました。これらの対策を十分に機能させるためにも、住民一人ひとりの防災意識の向上を目指して事業を進めてまいります。
また、能登半島地震を受け「半島防災」の重要性が紀伊半島にも広がる中、本町にとって、国道260号は、まさに「命の道」であることが強く認識されました。国道260号は、国、県をはじめ議員各位、多くの関係各位のおかげをもちまして、類を見ないスピードで進捗が図られており心強く思っております。
今後、道路・河川・水道などすべてのインフラ整備においても「防災」の視点をより強く持ち、日常生活を守ることと防災対策を一体のものとして進めていきます。
また、町の安全を守るため防犯カメラの設置をさらに進めていきたいと思います。
防犯カメラは、犯罪抑止など様々な効果が期待できる有効な防犯対策であり、ただ監視するということではなく、地域の防犯力を高め、安心安全に暮らせるために必要な対策であると考えております。
住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには交通の確保も不可欠です。特に一人暮らしの高齢者が増える中、交通の不便さは外出の機会を減らし、健康維持や要介護状態の予防に影響を及ぼすと言われています。
本当に必要な交通手段とその実現方法を探るため、実証実験を行い地域にふさわしい公共交通のあり方を模索してまいります。
町ぐるみで全力で応援しめざす「子育て応援日本一のまち」
子どもたちが夢を語るその輝く瞳は私たち大人にも勇気と希望を与えてくれます。
その子どもたちの健やかな成長を支えるため、保育・教育環境の充実、子育て支援の強化、そして子育てしやすい環境の整備も含め、安心して子どもを育てられる町を実現してまいります。
まず、子どもたちの生活と教育環境の充実について申し上げます。
保育所や小中学校は子どもたちにとって生活の場であり、社会とつながる場でもあります。そのため安全で安心な環境を確保することが何よりも重要です。
本町では少子化の進行や地震・津波の脅威といった課題に向き合いながら、防災の視点を重視し、適正な規模での保育・教育環境の確保に取り組んできました。その一環として進めてきた施設の統廃合や高台移転も、南島地区の小中学校統廃合事業をもって一つの区切りを迎えます。これからも子どもたちを中心に据え、より良い保育・教育環境の整備を進めてまいります。
子育ては家庭の問題とされがちですが、私は「この町の子どもたちは18歳までこの町で育てたい」と強く願っております。そして、ここで育った子どもたちが自分の未来に夢を持ち、その夢に向かって進む力を養えるよう町ぐるみで子ども・子育て支援に取り組んでいます。
子どもを育てる環境の充実には住まいの確保も重要な要素です。そこで、増え続ける空き家対策として普及啓発やマッチング体制の整備、公的活用などを着実に進めることで、空き家に再び明かりが灯り、人々が暮らし、活気ある地域で子育て世帯が定住しやすい環境を整えてまいります。
また、移住・定住の促進も欠かせません。近年、地方への移住者は増えており、特に仕事や生活設計を十分に考えた上で移住を決断する人が増えてきています。本町でもそのような傾向は顕著であり、移住希望者に対するそうした支援も行ってまいります。
「移住」は移住者にとって人生の大きな決断であり、地域にとっても未来を見据え、関係性を再構築する機会となります。
地域住民と移住者が安心して共に暮らせる環境を整え、ひとりでも多くの人がこの町で暮らし、子どもを育てながら、町の活力を支えていけるよう取り組んでまいります。
心豊かに元気に暮らす「誰もが元気なまち」
人生100年時代、誰もが年齢に関係なく、安心していきいきと暮らせる町を実現したいと考えています。そのために健康づくりや地域のつながりを大切にしていきたいと思います。
まず、健康づくりの推進について申し上げます。
健康は元気に暮らしていくための基本です。各地区での健康教室やサロンなど、人々が集える場を充実させ、心と体の健康への意識を高めていただくよう取り組んでまいります。
さらに住民同士が気軽に集える場の充実も進めてまいります。日々の暮らしの中で交流が生まれる場を整え、人と人とが支え合う地域社会の実現を目指していきます。
私たちが暮らしていく上で、年齢や生活環境の変化、価値観の違いによる不便さは避けられません。だからこそ、一人ひとりがその不便さに気づき、「どうすれば暮らしやすくなるか」を共に考え、工夫し、配慮することが大切だと考えます。互いを思いやり、大切にする心を持ち続けることで、誰もが元気に、心豊かに暮らせる町を目指します。
全ての力を結集した「輝きをもてるまち」
将来を見据えたまちづくりを実現するためには、地域の活性化と財政の安定化を両立させ、町の魅力を高めていくことが不可欠です。
地域の活性化には、町内外の人々に「南伊勢町を応援したい」と思っていただけるよう町の魅力を高めていくことが大切であります。町の魅力を高めることは、住民一人ひとりにとっても「この町に住んでよかった」という実感につながると思います。
そのために、豊かな自然、歴史や文化、祭り等の行事、地元の産業や産物といったものに加え、地域の普段の生活や気風、おもてなしの心など、多種多様な、有形無形の地域の資源を最大限に生かしながら、「地元で稼げる、暮らせる仕組み」を確立したいと考えています。
そして、すべての世代が輝き、充実した生活を送りながら、町全体の発展にもつながる好循環を生み出していきたいと思います。
こうした取り組みと並行して、ふるさと納税の活用も重要な柱となります。
ふるさと納税制度には、本町の財政基盤を強化するとともに、町の特産品や魅力を全国に発信できるという大きなメリットがあります。企業版ふるさと納税も含め、本町を応援しご支援いただいている皆様に心から感謝を申し上げます。
この制度は「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」であり、また「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設されました。
だからこそ、ふるさと納税を通じて南伊勢町を応援してくださる方々が、「この町を支えたい」「この町とつながり続けたい」と思っていただけるような魅力あるまちづくりを進めてまいります。
また、ふるさと納税をきっかけに本町とのつながりを深めてもらうことで、町外の方々とも継続的な関係を築き「関係人口の拡大」へとつなげていくことが重要であると考えています。寄付を通じて本町を応援してくださる方々に特産品をお届けするだけでなく、南伊勢町の取り組みや魅力を知っていただき、交流の機会を広げる仕組みづくりにも力を入れてまいります。
町の活力を支えるのは「人」であり、地域を愛する一人ひとりの想いです。その想いを大切にしながら、南伊勢町に暮らす人々、支える人々、応援してくださる皆様とともに町民一人ひとりが誇りと希望を持ち、活躍できる「輝きをもてるまち」を目指して、引き続き全力で取り組んでまいります。
全国豊かな海づくり大会の成功に向けて
本年11月9日に「全国豊かな海づくり美し国みえ大会」が開催されます。本町は海上歓迎・放流行事の開催地として重要な役割を担っており、その責務を果たすべく、大会成功に向けた準備の総仕上げを着実に進めてまいります。また、大会当日までの間三重県及び志摩市をはじめ関係機関と連携し、大会の機運をさらに高めていきます。
本大会のテーマは、「受け継ごう 命あふれる清い海」であります。
これまでも本町は水産資源の保護と活用に努め、豊かな海づくりに取り組んできました。この大会を契機に「稼げて誇れる魅力ある水産業の実現」という理念をさらに根付かせ、命あふれる清い海の未来を築いていきたいと思います。
そして、今年のみなみいせまつりは、本大会をその先につなげるスタートイベントとして、年末に開催したいと考えています。
直売所について
私は、直売所は単なる販売の場ではなく、生産者の所得向上や農林水産業の振興に貢献するとともに、人々が集い、地域の活力を生み出す場としても重要な役割を果たしていると考えております。
また、町内には「地元の農林水産品を地元で気軽に購入できる場がほしい」という声がある一方で、直売所の運営については、これを不安視する声もあると承知しております。
全国的にも出荷者の高齢化や出荷量・出荷頻度の減少、さらには出荷者数の減少といった問題が深刻化し、運営や収益の面で厳しい直売所も少なくありません。
一方、成功している直売所では、年間売上の5割以上を地元客が支えている店舗が半数を超え、地域の利用が鍵となっています。
こうした状況を踏まえ、本町に適した直売所の在り方を検討するため、意向調査を実施し、課題の整理を進めてきました。そこで、7年度には一定の方向性を提案したいと考えております。
令和7年度予算案について
そして、この施政方針を「実行力」をもって支えるのが、令和7年度予算案であります。
本町の財政は依然として厳しい状況にあります。加えて、防災対策やインフラの維持・更新など、今後も膨大な財政需要を抱えています。しかし、そのような中にあっても、健全な財政運営を維持しつつ、中長期的な視点を持ち、基金や町債を計画的に活用することで、持続可能なまちづくりに道筋をつける予算を編成することができたと考えております。
また、事業の精査と予算の重点配分を徹底し、メリハリのある予算編成を行いました。その結果、南島地区小中学校統廃合事業という一大事業を含め、一般会計の予算規模を118億515万9千円といたしました。特別会計の合計は49億9,570万5千円、企業会計の合計は32億696万7千円、すべての会計を合わせた総額は200億783万1千円となりました。
この予算案には、本町の未来への私の想い、そして進めていきたい政策が詰まっています。一つ一つを着実に実行し、町民の皆様に「元気で明るい明日への希望」を実感していただけるよう、全力で取り組んでまいります。
おわりに
本年10月1日、南伊勢町は合併20周年を迎えます。
この節目にあたり、今一度、南伊勢町の将来像を明確にし、10年後、20年後、さらには次の世代へと続くまちづくりを進めていかなければなりません。
私たちが取り組むべき課題は多岐にわたります。すぐに解決できるものもあれば、長い時間をかけて取り組むべきものもあります。しかし、どの課題も決して先送りすることなく、一歩ずつ確実に前へ進めていくことが重要であります。
「これからもっと町は良くなる」
町民の皆様がそう実感できる町政を展開するため、一つひとつの施策を着実に実行し、より良い未来を築いてまいります。
南伊勢町長 上村 久仁
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南伊勢町役場 総務課(南勢庁舎)
〒516-0194
三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3057
電話:0599-66-1111 ファックス:0599-66-1904
更新日:2025年04月01日